叙情的な映像で圧倒する、Cinema Pro撮影の基本と設定方法

スマホカメラの進化は目覚ましく、解像感だけで言えば高級一眼レフと遜色ないまでになっています。とはいえイメージセンサーが物理的に小さいのでボケませんし、少しでも拡大再生すると即ギザギザになってしまうという欠点もありますが。

さて、そんなスマホの中でも突き抜けたのが「Xperia 1」。これはスマホというよりも映像機器(笑)

標準カメラアプリの機能は他のAndroid製品と似たり寄ったりですので割愛するとして、

「なんか凄いらしいけど取っつきにくい」

と思われそうなのが、この「Cinema Pro」。こちら、全編Xperia 1のCinema Proで撮った映像です!

完全に映画そのもののトーンで叙情的な映像ですが、残念な事に「Cinema Proを使うだけ」でこういった映像が撮れるわけではないんです。

Cinema Proの詳しい解説とともに、この辺を解説していきます。

こちらで、実際にCinema Proだけを使い収録した映像を掲載しています。
こちらの楽曲MVでは、海辺のシーンをCinama ProとXPERIA 1のカメラ(スロー部分)で収録。
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Cinema Pro映像の形式と編集要件

撮り方を知りたいだけなら、ここは軽く流していただいて。民生用ビデオカメラの限界を軽く超えたスペックですので、全てが理解出来なくても大丈夫(笑)

さて前述の通り、Cinema Proの映像は一般的なスマホカメラの物とは別物で、SONYサポートによりますと

コーデック - H.265/HEVC MP4 (ビットデプス10bit)

ガンマ  - HLG
色域 - rec.2020

フレームレート - 23.98または29.97fpsから選択

"4k"選択時解像度 - 3860×1644
"2k"解像度 - 2520×108

S-Logこそ採用していないものの、これって完全に、10万は下らない映像機器のスペックですね(笑)

スマホアプリとしての標準を軽く飛び越えており、CM、ドラマや劇場映画クラスの映像制作にすら堪えうるスペックです。レンズや光を感じるセンサー部分の差異があるとはいえ、一眼カメラであれば、このクラスのスペックで映像撮影が可能なモデルはSONY α7ⅢやPanasonic GH5等数十万円クラスですから、それをスマホに搭載してしまった開発チームがいかに本気かが伺えます。

ちなみに、撮影した映像はUSB Type-Cケーブルがあれば一般的なデジカメ同様にPCへと取り込むことができます。

内部共有ストレージ→DCIM→XPERIA→Cinema Pro

に"Projects"毎で保存されています。

Google Drive等ストレージ経由でやり取りする方法もありますが、まあケーブルでやり取りするほうが簡単かつ素早い。

ぱっと見コントラストが低い理由

さて、ここで実際にCinema Proで撮影した"そのまま"の映像をご覧ください。


インスタ映えのカケラもない、低コントラストな映像。
鳴り物入りの動画アプリなのに、なぜこんなに地味な映像なのか?と思われるかと思います。
さあ、続いてこちらの映像をご覧ください。

何ということでしょう!

さて、どんなからくりがあるかと言いますと。Cinema Pro(正確には、その中のVENICE CSというLook設定)は「カラーコレクション・カラーグレーディング」という作業をほぼ前提としているんです。

https://mus1clab.com/200806-mavicair2-demo
Naixel
ちょっと(というかかなり)専門的な話になるので、以下「ちゃんと理由があるんだなぁ」程度に覚えておいてくださいね(笑)

簡単にいうと、これは撮影した映像の色を編集段階で調整して、印象を変える作業の事。そのために、あとからどんな色にするにしても

とりあえず黒つぶれ/白飛びだけはしない様に撮っておく

という考え方のもと、とりあえずコントラスト(色のメリハリ)を低いままにしておくことで"真っ黒と真っ白の部分"が出来ない様にしているんです。その後、撮影後の編集(ポスト・プロダクション)作業にて「色を編集する」事によって、はじめて本物の映画と見紛うような映像へと変貌します。

参考:SONYサイト「カラーグレーディングで映像の印象は変化する」

本当の意味での真っ黒/真っ白な部分には"色のデータが存在しない"ので、後から変えようとしても何も変わってくれない。それを防ぐためのもの。

「カラーグレーディングが"ほぼ"前提」と言ったのは、SONYのBRAVIA(矢沢永吉風)をはじめとして一部存在する"HDRという画質規格に対応した"テレビやモニターであれば、グレーディングなしでも普通のコントラストとして表示される為。それが、


HLG(Hybrid Log Ganmma

mafuyu
私は最初、Cienema ProもS-Logだと勘違いしていましたが。(・・

上記のスペック表の「ガンマ」という項目にある"HLG"は、Hybrid Log Ganmmaの略で、本職の映像屋さんが使う「Log撮影」という技術のメリットをより簡単に得る為の設定、というか規格。

まあ、上記の"とりあえずコントラストを低く撮っておく"という撮り方こそ"Log"という撮り方なんですが……

この"Log"の撮り方では、知識とそこそこ面倒な処理が必要であったり、正確な調整作業のためには一台50万とかするようなモニターが必要だったりと敷居が高いのですが、HLGではそこまで難しくなく、SONYのBRAVIA(永ちゃん風)などの最新鋭テレビでなら、何の処理をせずとも「Log撮影していい感じの後処理をした」風の映像を楽しめ、対応していなくとも簡単な色調作業だけで「結構いい感じ」になってくれる……という感じのもの(笑)

実際今回例に挙げた滝の映像も、

一応はEIZO製ですが)5万円台のモニターで
コントラストを高くして
カラーサチュレーションを調整

の3ステップであれだけの映像が得られました。

……それでも、普通にスマホをカメラとして使うだけの方には少々手間かもしれませんけどね。素人クリエイターにとっては本当に天の恵みのようなアプリなんですけど……(笑)

撮影した映像達を繋げて一本の動画にするだけならばXperia本体だけでも可能ですが、色調と呼ばれるこの工程は専用のPCソフトウェアが必要です。

ハリウッド等映画業界や放送業界でも使われる「Davinci Resolve」やフリーランスクリエイター/デザイナ系ユーザーの多い「Adobe Premiere Pro」等。Cinema Proで生成される動画ファイルは最新鋭の形式であり、古いバージョンのソフトでは読み込んでも正しく再現されないことがあるので、基本的には最新バージョンを使用することを勧めます。

mafuyu
実際、Davinci Resolve 15にてCinema Proの映像を読み込んだところ、画面に緑の線が走ったり解像感が失われたりという状態になりました。
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実際の設定方法!

さて、VENICE実機そっくりなGUIで一部の層大歓喜なCinema Pro。設定できる項目が多い分、ボタン一つで録画が当たり前な一般的スマホユーザーにとっては煩雑かと思います。実際に映像を撮る手順を確認しましょう。Project設定はシネマライクな気分を味わうべく

Look - VENICE CS

fps - 23.97fps

Resolution - 4k

そして、Xperia 1本体の画面の明るさを最大に。この状態が、カメラの捉えた映像を一番忠実に再現できます。先述の通りVENICE CSは後処理への高い耐性の為にあえて映像のコントラストを低くしてあるので、撮影の段階では色味は大して気にせず、構図やピントに集中すべし。

画像はハメコミ合成です!はい。

1.Lensを決める

SONY公式サイトでは、

16mm-超広角

26mm-標準

52mm-望遠

と呼称していますが、業界では50mm付近のレンズを"標準"と呼ぶ……場合が多いので、それに従うなら52mmが基本になります。もちろん目安でしかなく、自分の撮りたいイメージに合わせ、好きな様に設定してもらって大丈夫……なのですが!

レンズによって露出(明るさ)が変わることに注意!

SONY公式サイトのレンズ解説を見ると、

F値という数字が書かれています。これはレンズの"物理的な開き具合"を示す"絞り値"で、これが0に近いほど、たくさんの光をカメラに取り込みます。つまり

52mm/f2.4 = 16mm/f2.4 → 26mm/f1.6

という順番に得られる映像が明るくなります。
本物のシネマカメラや一眼カメラ等は、同じレンズのまま機械的に開口具合を変え、明るさだけを変えることができるのですが、かさばる物理的可動部になりますので流石にスマホにこれは搭載できません。


なので、レンズを変えたら下記の「ISO」と「Shutter」で明るさも調整し直す必要がある……事が多いと覚えておくと良いでしょう。

Lens選択画面の右上「Stabilizer」は手ぶれ補正機能、滑らかな映像を撮りたいならON。サスペンスライクに揺らしたければOFF?通常はONでいいでしょう。

手持ちでも撮れないことはありませんが、ちゃんとした映像作品を撮ろうとするならジンバルが必要です。というか、ジンバルが欲しくなるハズ(笑)

2.WBを設定

ホワイトバランス、つまり映像の中にある"白色"を白く見せるための設定……ですが、基本は右上で選べるAutoでいいです。
まあ一応、

"この場面では優しい雰囲気にしたいから、屋内だけどCloudyに"

といった風にするのが、一部のプロの使い方です。

3.ISOを調節

"光を電気的に増幅する量"なんですが、単純に映像の明るさと考えていいかと。映像に"真っ黒な所と真っ白なところが無くなるように"いい感じのバランスのところに設定します。

晴天な真昼の屋外であればISO64、屋内では640〜800と、割と大きく上下すると思います。それでOK。

屋外では外が明るく画面が見づらいので、私は100均の厚紙でフードを作って使っています。

4.Shutterを選ぶ

シャッター速度。
映像の滑らかさに関わる数値で、映像撮影では"fpsの2倍"が基本。つまり、180.0(1/47.95)が基本です。

普通の日常生活や観光で使うくらいならば、どの設定値でもそこまで違いがないのですが、被写体の動きが素早かったりすると少しイメージが違ってきます。これよりも上に行くと"滑らか/トロい"映像になり、逆に下に行くと"カクカク"っぽい映像になっていきます。


……180.0というのが基本なのですが、このShutter値を適当にいじっていると、これによっても露出(映像の明るさ)が変わることに気づかれると思います。


Cinema Proの大きな弱点がここ、レンズでの絞り機構がないがゆえに"ISOとShutterでしか映像の明るさを変えられない"という点。1/172.8にする程度ならそこまで変わりませんが、晴天の真昼とかでは1/770とか1/1541にまで高める必要も出てきます。つまり、それによって映像のイメージまで違ってきてしまうわけです。……まあ仕方のない事なんですけどね。

180でいい感じの明るさが得られるならばそこから変えないのがベターですが、ISOで対応できないほど暗いところでは360.0(1/23.98)まで遅くし、22.5(1/383.62)あたりまでならば早めても大きな違和感はないかと思います。

5.Focusを決める

つまりはピント。
右上のAuto ONでオートフォーカス。反応と精度はそこそこで、目立って遅かったりはしないので特には問題ないのですが、やはり迷うこともあるのでMFで合わせるのが安心ではあります。MFを使うなら、メインの黄色い点スライダーと、ピント送りの目印用スライダーがありますので、有効に活用してください。

流石にセンサーが小さいので、ピントは"山"というよりは"面"な感じは否めませんが、被写体には近づきつつボカす背景との距離をおく、という基本を押さえればそこそこボケてくれますよ。

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