
バスコンプ、ミックスバス、マスターコンプ。
コンプを正しく使うと、ミックスの完成度を超簡単に高めることができます。
散漫なミックスを"糊付け"して聞かせやすく出来ますし、楽曲のピークを抑えるように設定すれば音圧も上がります。
今回は、コンプをこのように使う場合、どのように選定するか、どのような設定をするか、解説していきます。
ミックスを始める前に
まず最も大切なのは、バスコンプを使う場合はじめからバスコンプを通した状態でミックスを始めるということ。
既に完成したミックスにバスコンプを使おうとしているなら、それはかならずしも良い結果を生まないかもしれません。その場合、バスコンプはマスタリングエンジニアに任せたほうが無難です。バスコンプは圧縮によってミックスのバランスを変えてしまいます、その結果、
苦労したせっかくのミックスがぐちゃぐちゃになってしまうかも。
また、バスコンプはかならずしも必要というわけでもありません。
あなたの曲であれば、使うか使わないかは、曲によって、あなたが決めていいんです。
次の記事では、バスコンプの種類による音の差について説明してます。
真空管バリアブルミュー方式について(現代の音を求めるならこれ!)
ちなみに、入力信号を2つ以上の周波数帯域に分割して個別に圧縮するマルチバンドコンプレッサもバスコンプとして使用できますが、通常の使い方をする限り、これは本末転倒だと思います。
特定の音のためだけにバスコンプとしてマルチバンドコンプを使って対処するより、ミックスの個々のトラックのバランスやEQを変更することによってそれらに対処したほうがよっぽど簡単ですよね(笑)
マルチバンドのバスコンプはマスタリングエンジニアに任せておきましょう。
アタックとリリースとはなんじゃい
基本としての、楽器単体へのコンプの設定に慣れている場合は、ミックス全体を圧縮するために同じ設定を使用しても、それほど違いはありません。
スネア、ギターのコード、ピアノ、ボーカルなど、多くの楽器の波形は似通っています。
試しに、両手をパチンと叩いたときの波形がこちら。
最大の音量に達するインパクト(アタック)で始まり、その後に共鳴(サステイン)が続いています。
コンプレッサーを使用すると、左から右への時間軸/ディケイに沿って、初期にあるインパクト/アタック部分を強めるか、インパクト/アタックを圧縮=減衰させることで、このインパクトと共鳴のバランスを変えることができます。
この原則は、個々のトラックだけでなくミックス全体にも適用できます。
例えば、速いアタック設定と中程度のリリースタイムは、インパクト/アタックを抑え、相対的な音圧と無加工時より長く伸びる音を生み出す。ただし、当然ながらマスターバスコンプは曲のテンポと楽曲の内容に大きく依存します。
ミックス内の個々の楽器を圧縮するとき、アタックとリリースの設定がソング全体のタイミングとどのように関係しているかを心配する必要はあまりありませんが、曲を圧縮するときは、曲の、つまりすべての楽器のグルーブを考慮する必要があります。
例えば、
テンポ180以上のアップテンポなラウドロックトラックで、非常に遅いリリース
という感じの間違った設定は、たいてい糊付け感よりも違和感のほうが勝ってしまい、いい結果になりません。
かと言って、速すぎるリリースタイムは音楽を損なう「ポンピング」効果を引き起こすことがあります。
鋭いアタック/インパクトの直後だけが一瞬強く圧縮されることで、曲全体が遠のくような感じになります。
いわゆるリバースエフェクトのような感じで、これを表現として意図するなら全然OKなのですが、意図しない場合は単なる「設定ミス」でしかありません。
これが正解になる例として、海外Djent等で一瞬だけ「グワッ」と遠のいてからサブベース等で一気にキメキメのセクションへ……という流れを聞いたことがあります。音楽とは可能性という話ですな。