
あるスタジオで録音、編集されたマルチトラック音素材を別のスタジオでも作業経過を維持したまま開くことができる利便性から、業務用スタジオにはAvid ProToolsが必ず導入されています。
作曲作業や打ち込み作業はCubase、Logicでも十分に可能ですし、むしろそちらのほうがやりやすいという話もありますが、素材の波形編集やミキサー卓やアウトボードとの連携機能、音楽を外部から流し込んで蓄えておく「デジタル世界のテープマシン」としての利便性は未だに圧倒的。将来的にスタジオとやり取りを行うとか、生音メインの制作を行うなら導入を検討するべきです。
さて、現在Avid ProToolsシステムは大まかに分けて3つのバリエーションを展開しています。
つまり、
- 無料で使用可能だが機能制限の強い「ProTools First」
- 通常のバージョン「ProTools(Native)」
- 業務ユースに特化した、多チャンネル同時入出力や専用ハードウェアによる処理を行う「ProTools HD」
ProTools HDは別途HDカードと呼ばれる専用ハードウェアによる処理と認証を必要とし、192 I/OやApogee Symphony等数十万円クラスのオーディオインターフェースとの組み合わせを前提とするため、個人で購入する意味はほぼありません。
ProTools First
Avidアカウントを作るだけで無料で使えるProToolsであり、最大16トラックしか作れないこと以外にはほとんど制限はありません。デモ音源程度であれば十分作成可能ですから、まさにはじめの一歩として最適でしょう。
ネットを介して離れた場所にあるProToolsと接続する「Cloud Collaboration」にも問題なく対応しており、メンバーそれぞれがこれを導入するだけで、各自が自宅に居ながら共同制作することも可能です。
ProTools(Native)
一般的ユーザーにとっての「通常版」。基本となるバリエーションであり、ほぼどんな使用にも使える汎用性があります。
Universal-AudioやSTEINBERG、TASCAMといったよく見られるコンシューマー用オーディオインターフェース機器に対応し、44.1kHz~48kHz(DVDなどの音質)動作時で 128トラック、192kHzの最大解像度動作時でも32トラックの同時再生が可能。
通常はこの形態を購入して使用することになるかと思います。
さて、この形態には大きく分けて2つの購入方法があります。
「永続ライセンス」を一度だけ購入するか、「サブスクリプション」として月額課金/年額課金を継続するか。
ProToolsのライセンス形態
永続ライセンス版
永続ライセンスとは文字通り「永続する使用ライセンス」であり、一度購入すれば購入時点で最新のバージョンが追加課金なしで永久に使用可能です。それと同時に1年間の「無料バージョンアップデート権」が付帯し、購入時点から1年間は追加課金なしで不定期にアップデートされる最新バージョンへとアップデートできます。

この1年間が過ぎたのちは、こちらの「継続アップデート権」を購入すれば引き続き最新版へのアップデート権が持続、購入がなければアップデート権は失われますが、その時点でインストールされているProToolsは変わらず永久に使用可能。

サブスクリプション版

こちらはAdobe CC製品等と同様に、使用している期間だけ料金が発生するもの。上の場合は1年間28,000円にてProTools通常版を利用できることになります。Avid社公式サイトでこのプランに加入すると35,300円ですので、上のリンクより購入したほうが7,000円ほどお得になります。
上記の期間中は最新バージョンへのアップデートなども可能ですが、期間を過ぎるとソフトウェアの使用は一切できなくなりますので、再度サブスクリプション版を購入して期間を延長する必要があります。
アカデミック版
以下に該当する学生の場合は、こちらのアカデミック版の購入が可能、通常版より3万円ほど安く購入できます。
大学/専門学校の学生—大学、短期大学、専修専門学校等の各種政府認定高等教育機関に在籍している学生1
教職員—大学、短期大学、高等学校、中学校、小学校、幼稚園、学位または修了証付与のある営利目的のキャリア・スクールや職業訓練校、演奏家養成を目的とした教育機関等、各種政府認定教育機関に勤務している教員および職員
在宅教育の教員—都道府県の在宅教育法規で定義される教員
高校生・中学生—高等学校、中等学校、中学校等の各種政府認定中等教育機関に在籍している学生1
在宅教育の高校生・中学生—都道府県の在宅教育法規で定義される、在宅教育を受けている高校生・中学生
https://www.avid.com/ja/academic-eligibility
この場合、購入自体は通常通り行った後で、 Abid社と提携している身元確認サイト「Identit-e」 上で 資格証明写真などをアップロードする処理が必要になります。
この手順についての詳細は Avid社による公式解説をご覧ください。(日本Avid社のウェブサイトへ)

iLok
違法コピーされたソフトウェアの使用を防ぐため、Avid ProToolsの使用には「iLok」と呼ばれる物理的キーが必要です。
同様に、ProToolsへ加える拡張機能であるソフトウェア「プラグイン」のライセンスもこのキーを利用する場合があります。

これによりライセンスは厳重に管理され、正規に購入したProToolsであってもこのキーをコンピュータのUSBポートへ刺さなければ起動することができません。
現在は「iLok Cloud」として、キーがなくても起動ができるサービスも提供されていますが、その場合ライセンス情報をオンラインから引っ張ってくる形になるため、ProToolsを使用するコンピュータにネット接続できる環境が必須になります。
出張録音等、必ずしもネット接続できる環境で使用するとは限りませんから、結局iLokは必須です。