
ミックスは難しい?
ミックスというのは難しい作業ではありますが、なぜ難しいか、考えたことはありますか?
私は、その答えは「正解が無い」せいだと考えています。
音楽に正しさというのは存在しないのに、どこかで正解にしなければならない。経験を積もうが、どんな本を買おうが、その塩梅が難しいのだと思います。さて、そんな難しさを少しだけ緩和してくれるのが、VUメーターという存在です。
細かい理屈(dBUやら600Ω……と言われてもハァ?ってなるだけですよね?)は抜きにして、実践できる使い方をお教えします。
この方法は、アナログ卓の時代からミックスをしているエンジニアには常識と言っていい方法論ですが。

世界で最もヒット曲をミックスする、SSL4000卓のVUメータ
ミックス前の下準備
マスターフェーダー、または全部の音が通るよう設定したAUXトラックに、VU METERとピークメーターをインサートします。
VUメーターはアナログ式の針が動くタイプを再現したものだと一番見やすいですが、なければデジタルの表示でもいいですし、VUメーターがなければRMSメーターでもまあ許容範囲です。ProToolsであればミックス画面のメーター部分を右クリックでメーターの種類を変更できます。
どうしてもVUを見られるものがない場合も、1176系プラグインは右端の"GR"ボタンを"+4"や"+8"あたりに変更するとメーターが0VUを指すようにできるので、これを利用する手はあります。
実際の使い方
別々のプラグインを指してもよし、IK-Multimedia T-RackS METERINGの様に一つのプラグインにパッケージされていても構いません。
そして、"音作りを済ませたキック"の音だけをソロにし、この音だけでVUが-10dBめがけて振れ続けるようにします。-7や-20へとふらふら振れるようなら、そのキックはダイナミック過ぎます。
つまり音量のばらつきが大きすぎる。
表現としてあえて狙うならともかく、通常楽曲の一番の土台要素であるキックの音量がばらついていては、聞く側としては安定して"ノリ続ける"ことができません。この状態から、他の楽器の音作り/バランスどりを開始してください。
その後、こんなもんで完成したかな?と思ったとき。
一般論的な「正解のMix」にたどり着いているなら、その時VUメーターは0付近をめがけて安定して振れるようになっているはず。
タム等が入った際に少し突出するくらいは大丈夫ですが、0にいた針が+2とか+3まで触れるようでしたらそのタムはローが多すぎるor音量が大きすぎます。
おそらくは後に控えるマスタリング段階で、そのタムのせいで音圧を犠牲にすることになるでしょう。
ちなみに、最初にインサートしたピークメーターですが、ミックス作業中においては実質的に全く使わないと思っていただいて構いません。ピークメーターはあくまで出力が0を超えていないことを確認するためだけに使います。慣れてくれば0VUを超えさせることはほとんどなくなるので、インサートしなくても良くなるかも。
つまり、ほとんど見る必要はありません。
音を可視化できる
VUが一曲を通してぴょこぴょこと行きつ戻りつ動き続けるようなら、その曲はそこそこダイナミックで変化のある風に聞こえる曲だと言えますし、動きが少なくずっととどまり続けるようなら、その曲は平坦で変化のないように聞こえるということ。
ロックバンドサウンドでは多少音量差があってもダイナミックなトラックが好まれるでしょうが、ダンスやそれに影響を受けたポップスではそれよりも一曲通した安定性が有利かも。