
1957年製Les Paul Special。

300万〜が相場な1959年製Les Paul Standard(いわゆるバースト・レスポール)と比べれば安価ですが、それでも100万は下らない値段です。
私がなぜオールドを購入するに至ったか、現行ギターとは具体的にどこが違うのか。
ビンテージが高い理由
当たり前のことですが、ビンテージギターの絶対数、19○○年に製造されたのは何本、という数は増えることがありません。
当時はバーストも現在の通貨価値でいう30万円程度のものだったのが、現在では100倍近くなっています。
これには大きく分けて2つの理由があります。
ネームバリューと希少性
59年製のLes Paulは、とにかく有名です。
経年で破損したものも多い中、現在も実用できるバーストは数百本程度。ユーザーにはLED ZeppelinからVan HALEN、ZZ Topから奥田民生まで、ビッグネームが名を連ね、とにかく誰も手放しません。
名盤のレコーディングに使用され、今も昔も伝説たちに愛されているとなれば、価格が跳ね上がるのは当然。そして更には、そもそも一般向け市場に出回らないと来ています。
売却は競売が当たり前、下落の可能性の皆無な人気者とあらば、儲けを狙う資産家やコレクターの目線も熱くなります。
こうなれば、価格が高騰しないわけがありません。
そして、当然
楽器としてのクオリティ。
も現行のものとは全く違います。
いい音のするオールドの多くは強固なネック材とその仕込み、そして軽いボディが特徴です。
グランドピアノ等を思い浮かべて頂ければ分かるように、
強固な木材は弦の振動に共鳴せず、弦振動を殺さない余裕を持ちます。
その自然な振動を、PAF(パフ)やP90といった極めてナチュラルかつ低出力なピックアップにて拾うことで、ビンテージギターの強大なタッチレスポンスと反応速度が生まれています。
ビンテージギターは張る弦の振動の仕方そのものが違う
つまり、ギターから出力されるサウンドも多くの現行品とは違う。
ビンテージ式セットアップの意味
一方、当時のギターアンプは大変大雑把なもので、年代はおろか一台ごとに歪み方や音量まで違うのが当たり前。イコライザーの効きも実質"0か10か"みたいなもの。
しかし、音の個体差は大きくとも、それを補ってあまりあるのがその反応速度。
オールドアンプは「ピッキングする前に音が出る」と表現されますが、これはつまりこの音を出したいとギターを弾いた瞬間にその音がなっているということを指します。
まあアンプに関しては現行のものでも大変に素晴らしい物は多数ありますので、選択肢は広く採ってよいと思いますが。
さて、このようなアンプと反応の速いオールドギターとを組み合わせると、考えるよりも先に音が出ているような体験が得られます。
これこそが楽器としての本質であり、クラシックで使われるような楽器と同様の、表現としての演奏の仕方です。
余談
1968年製のLes Paulの価格をご存知でしょうか。この年代は、オールドの名を冠するレスポールを狙う人々に最後のビンテージ扱いされる年代です。
この年代以降(69年製を含む)は、バンドブームによりエレキギター全般のラベルが"楽器"から"売れる商品"へと変化し、Gibson社/Fender社ともに一気に製品の質が下がることになります。大量生産が原因で、80年代より後のギター製品は概ねオールドとしての価値はつけられません。
ただし、80sのGunsやB'sの音を出したいならこの年代がベストマッチ。このあたりが目標の方も決して少なくないのでは?
50〜60年代のLes Paulではなく、80年代のモデルを購入した方が近道でしょう。